Lifestyle

インタビュー

箱根宮ノ下の古民家カフェ 〜まちとつながる極上の足湯空間〜

安藤義和さん

ナラヤカフェ オーナー

yoshikazu ando / naraya cafe owner

2016.11.21

箱根登山鉄道宮ノ下駅から歩いてすぐ、古民家を改装した空間にカフェ、ギャラリー、そして足湯を楽しむことが出来るスペースが目の前に。関東近郊はもちろん、海外からもこの足湯を目当てに宮ノ下を訪れる人も増えているほど、新たな観光スポットとしても有名な場所。取材した日はあいにくの雨模様、けれども多くの方々が足湯を楽しみ、おいしいコーヒーを味わいながら、ゆっくりとした時間を過ごされていました。今回は宮ノ下で300年ほど続いた奈良屋旅館の名を引き継いで、この場所でカフェを運営されている安藤義和さんにお話を伺いました。


─素敵な空間ですね。古い柱がむき出しのカフェ空間、ウッドデッキの足湯と。いくつかの建物が繋がっているんですね?

義和さん)ありがとうございます。
そうですね、元々ここに4つの建物が建っていて、1つの建物は解体、その他はリノベーションして作っていった場所です。

─ここは元々どのような場所だったのですか?

義和さん)私の家が代々旅館業を営んでいて、ここは従業員寮だった場所なんです。ベースになっている建物は、築50年の木造建築で、夫婦でこの場所でカフェと安宿をやりたいと思っていたんです。元々宮の下は海外からのお客様が多く訪れた温泉場。多くの方をおもてなし出来る空間を宮ノ下駅そばに作れたらと。それが、ひょんなことから中学の同級生で一級建築士になった石井くん※と地元で再会したんです。お互い東京にいると思っていたので、どうしたの?みたいな感じで。ちょうど彼が小田原駅近くの飲食店の仕事でこっちに戻ってきている時でした。

※石井尚人さん アトリエ系建築設計事務所 MOUNT FUJI ARCHITECTS SUTUDIO のメンバー

─そうだったんですね。

義和さん)僕自身も建築や都市計画を学んで来ていて、この土地・建物を活かして出来ることをずっと考えてたんです。そのプランを話したら、「いいね、何か一緒に出来たらいいね。」と言ってくれて。
そこからですね、彼が所属するMOUNT FUJI ARCHITECTS SUTUDIOの原田さん達も連れて来てくれて、この場所のこと、宮ノ下の町全体のことを考えながら大きな改装計画のマスタープランを一緒に作ってもらったんです。

─その時にはすでにこの足湯空間のアイデアがあったんですか?

義和さん)ありましたね。ただもう少ししっかりとコンクリートで下地を作って、いたるところに足湯があるような、ガウディのグエル公園的なものだったんですね。ただ予算を弾いてみると、やはり非常に高くなってしまうと。それでどうしたものか、となったんです。

そんなこともあって、マスタープランの大枠を活かしながらまずはセルフビルドでやりながら考えようと。
危険を伴う作業や素人ではできない作業もあるので、プロに依頼するとこはプロに。先ずは出来るところを自分たちで進めながら、改装しようとスタートしたんです。

─そうだったんですね。改築はスムーズに進んだのですか?

義和さん)2006年の夏ぐらいから、カフェになっている建物の解体からはじめました。つなぎを着て、ふすまを壊して、床を剥いで、スケルトンの状態にするまで進めていったんです。さすがにそこからは僕らだけでは出来ないので、大工さんやコンクリートの基礎を作っていただく土木工事を依頼する会社さんに入っていただいて。スタイルとしては私が施主として、石井くんが設計・監理、材木店から直接木材を仕入れて、大工さんを人工で動かすという形です。現場監督・作業員として自分や石井くんが担うというスタイルですね。

工事を進めて行く中で、だんだんお互いの信頼関係も芽生えて来るという感じで。今回材木を仕入れさせてもらったのが大山材木店さんなんですが、友人のお母さんがよく銀行で会うイケメンの若旦那がいるから紹介するわ、という展開で。笑 その大山さんが現場に連れてきてくれた大工さんが、実は昨年小田原城の改築を担当した芹沢毅さんだったんです。宮大工の棟梁をされている方です。最初にお会いした時からオーラがありました。笑

─小田原城を作る方に関わってもらったんですね。

義和さん)そうですね、光栄です。

─ナラヤカフェには、多くの地元の木材が使われていると聞いたのですが、元々そういう作り方をしたかったのですか?

義和さん)実はそうではないんです。大山材木店さんと話をする中でいろいろなご提案をしていただいた結果です。例えば足湯の空間のウッドデッキ。通常だったら外材※を使うんです。でも県産材で、杉の赤みの部分だったら長く持つから大丈夫だよと。僕たちも地元を盛り上げるためにカフェをやっているのもあって、出来るだけ地元の材を使いたい気持ちがあったんです。でも、地元にどんな木があって、どの部分を使ったらいいのか、素人の僕らではわからないですよね。

カフェのカウンターも一枚板を使ってますし、立派な梁も県産材です。当初はこんな立派な材だから高いんだろうなって心配してたんですね。その辺はきちんと予算に合わせて、大山さんのお父さんの目利きがすごいらしくて、適材適所、良いクオリティのものばかり用意していただきました。

※外材:外国産材

─あの梁、すごく立派ですね。新旧の木材が良い感じで融合してます。

義和さん)そうですね、柿渋を塗ったり、あたらしい物と古いものがうまくマッチングした空間になるようにいろいろ工夫しました。カフェの床材も大山さんに提案してもらって、天然塗料を使ってます。カナダの国立公園でも使われているものらしくて、風合いが良くて気に入ってます。


─いい風合いです。

義和さん)本当に良いチームで仕事をさせていただけました。皆さんと一緒に仕事が出来てラッキーでしたね。大山さんの所とも近いですから、丸太から材を選んだり。加工が必要になったらパッと飛んでいって、すぐ加工して戻って来てくれたり。使われた木材が、窓から見えるあの辺りで育った木なんですよ、ってお客様に言えるのも、大山さんや芹沢さんと一緒に仕事が出来たからですね。

2006年に工事をはじめて、2007年にカフェをオープン。それから少しずつ手を加えていて、次にギャラリーをオープンしたり、その都度チームを再結成して進めさせていただいてます。震災の年に「ならやあん」をオープンしたのですが、ここは木の製品を扱うショップとして、さまざまなアイテムを販売してます。ちょうどここを作っている時に震災があって、その時はお客さんもガクンと減ったんですよね。その分時間がたくさんあったので、芹沢さんの仕事を見るのを楽しみに每日出社していたくらいです。古くなった土台をつぎ直して改修したり、銅板を使って屋根を作っていただいたり。本当に寺社建築のような。美しい仕上がりになっています。


>あたらしく準備を進めている宿泊施設で話す大山材木店の大山さんと安藤さん。

─最初にカフェをオープンしてもう10年ですね。実際に場を運営していく中でどのような反響がありましたか?

義和さん)そうですね、やっぱり木の持つ魅力というか、力ですね。足湯の周りをウッドデッキにしたんですが、みなさんハダシのまま出て歩かれるんです。もし木ではなくてコンクリートだったら、違ったコミュニケーションがここで生まれるような気がしますね。海外のお客様も本当に楽しんでくれていますね。

─気持ちいいですもんね、足湯最高です。

義和さん)最初は足湯を無料にするかどうか、すごく迷っていたんですね。もしかしたら、無料だから足湯だけ浸かって帰ってしまうのではないかって。でも、みなさんカフェと合わせて使ってくれますし、帰る時に『ありがとうございました。』って言ってくれるんです。嬉しいですよね。

─これからのナラヤカフェはどんな進化があるのですか?

義和さん)はい、実は今4つめの建物を作っている途中です。ここは宿泊が出来るゲストハウスの機能もありつつ、イベントをやるスペースでもあり、多目的な場所にしたいと思ってます。大山さんたちとも連携しながら、少しずつ進めているところです。ここも他の建物同様、素敵な空間になりそうです。

それから街のハブとなる場所として、もっともっと街をオモシロクしていきたいですね。2011年から「宮ノ下さんぽ」という企画を作って、地元のイラストレーターさん、WEBデザインのクリエイターさんと一緒に宮ノ下を楽しむためのMAP作りをしていて、ガイドツアーなんかもやってます。もう6年ほど、地元の商店街の方が街を案内してくれるツアーを実施してます。昨年は海外の方向けにイベントをやったんですが、これからの箱根を盛り上げて行く上でさらにやらないと行けないことに気がついたり。

この場所からもっと箱根全体に広がる活動をしていきたいですね。

─安藤さん、今日はお忙しいところお時間ありがとうございました。これからのナラヤカフェの進化に期待しております!

ナラヤカフェ: http://naraya-cafe.com/



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