Lifestyle

インタビュー

小田原の丘の上の一軒家 〜いつも家族の真ん中に。地元材のウッドテーブル〜

井手英策さん

経済学者

eisaku ide / economist

2016.11.11

今回は小田原にある丘の上、南側に海が見えるゆるやかな斜面地の静かな住宅地で暮す井手さん宅に伺います。家長である井手さんのお仕事は経済学者。東京にある大学で教授として経済学を教えながら、家族と一緒にゆったりと暮らせる場所として2014年に小田原の地を選びました。小田原材の一枚板のテーブルや、地元の木工技術を活かしたダイニングテーブルなど、暮らしの中で自然と木と触れ合う生活を実践されています。どうして小田原の土地を選んだのか?木を身近に感じる暮らしを選んだきっかけは? 2015年に建築家に依頼をして建てた、暖かい木のぬくもりが感じられる自宅でお話を伺いました。子ども達が幼稚園や学校から帰ってくる度、徐々に賑やかになっていくリビングでの楽しいインタビューとなりました。


──まず小田原に移り住んだきっかけを教えて下さい。

英策さん)元々東京の吉祥寺の辺りで暮らしていたんです。その時から、ちょっと人の多さに辟易する事が多くて。どこへ行くにも人も多いし、休日にショッピングモール行くにも何か買わないと駐車場も無料で停められない。なんか違うかもねって。そうこうしていると、2013~14年はアメリカで暮すことになりました。その頃から帰国したら、どこか別な場所に住もうかって妻と話をしてたんです。

で、帰国した足で近所のスーパーに立ち寄ったんですね。作るのも大変だから、夕食を買って家で食べようって。そうしたら、スーツケースを持ったまま、スーパーでまったく身動き取れない状態になったんですよ。混雑してて。その時に、これはもう無理じゃないって。帰国したのが2月だったんですけど、2ヶ月後の4月には家を売って小田原に越して来てましたね。(笑)

─すごいスピード感ですね。最初から次は小田原に決めていたのですか?

英策さん)いや、いろいろな場所を考えました。ただ職場である東京から通える、可能な限り遠いところにしようと。元々妻も川の近くで暮らしていたし、やっぱり水が近くにある場所がいいよねと。あとは新幹線がとまる場所で、海があってと。必然的に小田原が最終選択肢に残ったんです。


元々歴史好きですし、お城があることはもちろん、歴史のある良い町だなと。まず最初に自分1人で街を見に来て歩いてみて、それから家族みんなで来てみて、ここならいいよねって。

─それで小田原に。最初からこちらの家を?

英策さん)最初はマンションでしたね。駅前の。子どもが3人居るので、飛び跳ねたりいろいろ気を使うので、1Fのマンションに移り住みました。ただそこが陽当たりゼロだったんですよ。(笑)
最初は大丈夫かなと思ってたんですが、さすがに陽がまったく入らない状態だと、良くないなと。気分的にも滅入ってしまうのもあって、小田原で土地を探して家建てようってなりました。

─そうですよね、陽当たりは大事ですもんね。家を建てる時にどのようなことを気にされましたか?

英策さん)実は建築家にお任せだったんです。この家は建築家の伊藤暁さんという方にご依頼をしたのですが、この伊藤さんが木を沢山活用しましょうとご提案してくれて。最初は僕らにとっては木はあくまで建材として、家を建てるための材料の1つにすぎなかったんですね。

それが家を建てるプロセスの中で、工務店さんの方々と話をする機会が多々あって、木が生き物なんだって感じるようになって。
ある大工さんが、夜中に家の柱がピキッーンと音が鳴る時がありますよねと。それは木が自ら室温に合わせて伸縮をやっている証拠なんだって。家を建ててすぐ冷房やら暖房を使い過ぎると、まだその木が環境に馴染んでいないうちに急激に環境を変えてしまうことになるので、大きなヒビが入ったり、ねじれたりすることもあるんだって。最初はなるだけ自然に任せた方がいいですよ、って言っていただいて。その辺りから、木って面白いな、生きているんだなって。

─素敵なお家ですよね。木の感じがすごく暖かい感じがします。



ありがとうございます。収納も多く作ってもらってますし、1年を通して四季を身近に感じることができる家なので、家族全員すごく満足してますね。

─今ご自宅で使われているテーブルが特別な木を使っていると聞いたんですが、そのお話をうかがえますか?

英策さん)そうなんですよ。家を作ることになる少し前、小田原市の総合計画を考える審議会の座長を務めさせていただく機会があったんです。自分としては形式だけの審議会ではなくて、広く全国から面白い活動をされている方々を集めて、いろんな専門家のお話を伺いながら、皆で小田原の未来について考えていく会にしたい。そんなお話を市長させていただいて、賛同していただいて。その時に集まったメンバーの中に、小田原で木材業をやっている小田原地区木材業共同組合の芹沢さんと高木さんがいらっしゃったんです。お二人とも法被を着てて、とにかくオーラがあるんですよね。(笑) 小田原の歴史をがっつり背中にしょってます、という感じなんです。

その審議会のゲストで建築家の伊藤さんをお招きした会がありまして、小田原に来ていただいたんですね。ちょうどその時に研究室が立ち上がる時期で、研究室で使う机を地元小田原の材で作れたらいいね、なんて立ち話をしたんですよ。
せっかく繋がったご縁なので、芹沢さんと高木さんにそのご相談をさせていただいたら、協力してくれることになって。
そこからが凄かったんです。しばらくしたある日、高木さんに呼び出されて、『井手さん、木選びに行きましょう。』って言われるんです。車で小田原の山中をあちこち案内されて。小田原では有名な林業家の辻村さんの大切に保管されている材を見たり、今の林青会の会長の大山材木店の大山さんの所にも連れて行ったりして。行く先々で、この木は何十年もので、乾燥工程だけでも何十年と時間が掛ってる、そんな凄い材ばかりを見せられるんですよ。で、この中から好きなの選んで下さいよと、正直不安でしたね。(笑)予算感は最初に伝えていたものの、これは本当にその予算で納まるのかと。これは多少高くなっても仕方が無いかなーと半分心に決めて、見て回っていたんです。

で、今にして思えば多分高木さんの中ではすでに決まってたんだと思います。 で最後に高木さんが見せてくれたのが樹齢300年の杉の木の一枚板。しかも、その材は先日の小田原城の“平成の大改修”で復活した天守閣の中にある摩利支天殿で中心に使われている“将軍柱”と同じ材だと。その材の中心部分を将軍柱に、その材を削った外側の材だっていうんです。

その事を聞いたら驚いてしまって。

─それはそれは、凄い材ですね。でも、金額がちょっと不安ですよね。

英策さん)そうなんですよ。ただこちらの予算感を事前にお伝えしていたので、その予算に合う形で調整いただけました。

─味わい深い一枚板ですね。この机を使ってお仕事できるのが羨ましいです。ダイニングテーブルは一点変わって、様々な木を使ったものですよね?

英策さん)ダイニングテーブルは、2016年3月の「やんべーよ」(小田原地区木材協同組合主催)という小田原の工務店の方々が集うイベントがありまして、そこで出会ったんです。

大きなハウスメーカーではなく、1つ1つこだわりの家づくりをしてくれる地元の工務店さん達がその技術や想いを伝えるイベントです。そこでモデルルームの空間があって、一目惚れでしたね。聞けば、すべて小田原の材を使っているとのことで、さまざまな種類の木を一目で楽しめるアイテムなんです。これは欲しいと思いましたね。


─実際に使ってみていかがですか?

英策さん)いいですよ。木が身近にある空間は、ほっと一息付けますし、なんといっても家族みんなで過ごす時間が東京にいる頃よりぐっと増えた気がします。ダイニングテーブルは、購入時から比べると、各パーツが伸縮して隙間が出来たりしているんですが、これこそ木が呼吸している証拠だなーと、日々の変化を楽しみながら使わせてもらってます。実はそこにある小テーブルも、研究室の机同様、杉の一枚板なんです。子どもたちが絵を描いたり、それはもう使い倒しているんですね。昔は汚さないように、叱ってましたけど、この机を使うようになってからは、もし汚れ過ぎたら、高木さんなんかにお願いしてカンナを掛けて、1枚削ればきれいになるだろうし、むしろそうやって使って行った方が愛着が湧いていいなーと思ってるんです。その辺りは身近に木材業を営んでいる方々が多く暮らしている小田原ならではの、ライフスタイルなのかもしれませんね。家具との付き合い方が、考え方が大きく変わりました。

─いいですね、よごれたら削ってきれいにする。大事に何年も使えますしね。

英策さん)ですね。家に遊びにくるお客さんに毎回自慢してますよ。(笑) 木材業協同組合の皆さんとの出会いはもちろん、小田原に移り住んで本当に良かったと思ってます。東京とは流れる時間のスピードが本当に違うんですよね。お魚屋さんや八百屋さんがきちんと残ってて、四季折々の旬が移り変わっていく。それが食卓にも色濃く反映される。春夏秋冬をこんなにまで意識しながら暮すのは東京暮らしでは難しかったと思います。


お祭りも多いですし、自然と地域の方々と繋がっていく感覚。これも本当に小田原の良いところですね。気がついたら友達の友達は大体繋がる。(笑) 息子同士が同じ小学校に通っている同級生だったり。今では家族みんなが、小田原での暮らしを満喫しています。

─井手さん、今日はお忙しい中お時間いただきましてありがとうございました。今度また味わい使い込んだ机の姿を拝見させて下さい。

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